蜃気楼の彼方。
その日、
城下町は夜明け前のしじまを破られた。
大勢の足音によって。
その総勢60名の捕り方の相手は
_空を飛び回る『鵺(ぬえ)』 だ。
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_時は天明5年の六月未明、場所は備前岡山の城下町。
捕り方の視線は間口三間あまりの町家に集まっている。
同心たちが必死に探索して突き止めたのがそこだった。
そこには_
城下一帯を騒がせ、『イツマデ、イツマデ』と鳴いては藩の失政をあざ嗤い続けてきた
『鵺』が潜んでいるかも知れないと、捕り方は目潰しを手に握り、二階の窓や瓦屋根に
視線を向けて警戒をしていた。そして、その中へ町名主と五人組頭が入っていった…。
| 始祖鳥記 |
そんな緊迫した場面から始まる本書は、あの出世作_
| 雷電本紀 /飯嶋和一/著 [本] 販売元:セブンアンドワイ ヤフー店 セブンアンドワイ ヤフー店で詳細を確認する |
で一躍、彗星の如く歴史小説界に登場した『飯島和一』の五作(?)目。
その作品は『ハズレなし』と定評のある著者。本書も違うことなく読みごたえあり!
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主人公は『鳥人』備前屋幸吉。厄災が打ち続く暗黒の天明期に、表具師として大成
しながらも凧作りに夢中になり、やがて己が凧に…。波乱の生涯を過ごした人物。
しかし、それだけではなく_塩問屋の巴屋伊兵衛、たく駝丸の船頭で幸吉の幼馴染の
源太郎_それぞれが同じ空の下でつながり、影響し合い、それぞれの生き様が重なって
いく…。天明の大飢饉で疲弊し、腐敗した世の中を打ち破ろうとする人々の憤怒と希望に
背中を押され、駆け抜けた人々の熱い物語となりました。
彼らは一様にそれまで築きあげた地位や立場を『馬鹿馬鹿しい』と嗤い飛ばし、『なんて
ザマだ…』と己を叱咤し、そこに安住することなく、遠くを見つめて生きていく。その姿に
喝采を浴びせるのは当時の人々だけではなく、時をも越えて現代の私たちにも通じるもの
があります。
腐敗しているのは、糞侍(ぶさ)どもの生活維持しか考えず暴利をむさぼり、民を
省みない悪政か。それとも、流れをせき止められた水のように、息を潜め、停滞している
己の人生か…。
そう、今も『鵺』は夜空を飛んでいるかもしれません。
腐敗臭を放つ世の中の空を。『イツマデ、イツマデ』と啼きながら…。
………
では、また次回。
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